「アントキノイノチ」
その人が生きた証である遺品。それは人一人の思いの結晶です。
丁寧にしまわれたお着物。
着古した部屋着。
同じ作家が並ぶ本棚。
時代遅れのカセットテープに手書きのタイトル。
家族にも隠されていた骨董品。
主を失ったギターは、かなわなかった夢の残滓でしょうか―――
几帳面に片付いた部屋も、またどんなに散らかった部屋でも、その独特の静けさはいつも我々の胸を打ちます。
整理していく遺品の数々から、込められた思いを感じずにはいられません。この感覚こそ遺品整理士の誇りであります。
また、遺品整理の仕事のやりがいであると常々思う次第です。
さて、私が遺品整理に初めて携わる人にオススメしている、一冊の本があります。
この本は、研修の一環として社員にも読んで欲しいとの想いから、当事務所に常備しています。遺品整理業界ではバイブルといえます。
さだまさしさん著「アントキノイノチ」です。
杏平はある同級生の「悪意」をきっかけに二度、その男を殺しかけ、高校を中退して以来、他人とうまく関われなくなっていた。遺品整理業社の見習いとなった 彼の心は、凄惨な現場でも誠実に汗を流す会社の先輩達や同い年の明るいゆきちゃんと過ごすことで、ほぐれてゆく。けれど、ある日ゆきちゃんの壮絶な過去を知り‥‥。
「命」の意味を問う感動長篇。
我々遺品整理業者を題材にしていただいた小説であり、共感しかありません。
命の大切さという、ともするとありがちなテーマ。ですが現代社会はいつまでも忘れがちです。
それを仕事を通じて実感させられるのが、遺品整理なのですから。
みなさまにも是非お勧めしたい名著です。